
温暖化予測の研究は実際にどのようなことを行うのでしょうか?
私の研究は、地球温暖化の将来予測で、スーパーコンピュータを活用してシミュレーションを行っています。
コンピュータで計算するというと膨大な量の観測データを打ち込むかのように誤解されるケースが多いのですが、それは違います。コンピュータに入力するのは、地球の大きさ、回転、地形、大気の成分といった基本的なものだけです。
それらを物理の方程式に当てはめて計算すると、コンピュータの中にできた地球上で、熱帯雨林には雨が降り、砂漠には雨が降らず、北極は寒くなり、低気圧、高気圧も現れます。つまり、現実の地球と同じようなことが自動的にきちんと起こるのです。
では、物理の方程式があれば、正確に地球の気候変化がわかるかというと、実はそうではありません。
地球の気候は非常に複雑なので、まだまだ現在の科学では分からない部分があり、例えば『雲がどれくらいの確率で雨に変わるか』など、経験的な要素が必要になってきます。
物理の計算でも、実際の大気や海の様子をかなり高い精度で再現できるのですが、詳しく見ると誤差が生じています。
そこで、計算されたシミュレーションと実際に観測されたデータの結果を照らしあわせ、コンピュータの中に、より現実に近い地球をつくることが重要です。それをもとに将来の予測を行います。
また、将来のことは、人間がどういう社会をつくっていくかによって変わっていきます。それに関しては客観的な予測ができないので、いくつかのシナリオ*を与えて計算することになります。
例えば、『社会が経済優先で進んでいく』『社会が環境配慮型になる』といったシナリオを考え、それぞれの場合について、これから先の未来をコンピュータで計算して予測します。
そのシナリオの作成は、各国の人口や経済活動などの社会経済のモデルをもとに行われていて、それを専門に研究している人もいます。
ひとくちに温暖化予測といってもさまざまな分野の研究者の成果が集約されているのです。
スーパーコンピュータの性能が研究に与える影響は?
シミュレーションの精度には、いうまでもなくスーパーコンピュータの性能が影響してきます。気候予測のシミュレーションを行う場合、大気および海洋の状態を、緯度、経度および高さ(海は深さ)方向の3次元の格子(マス目)に分割して計算します。専門的にはマス目の細かさを解像度と呼んでいるのですが、コンピュータの性能が上がるほど3次元のマス目が細かくなり、解像度が上がります。
もちろん、スーパーコンピュータが進化しても、計算する気候モデル**が現実と違っていれば、正しい結果は出てこないので、スーパーコンピュータとともに研究者が考える気候モデルも一緒に進化する必要があります。