
IPCCと日本の研究者との関わりは?
まず2002年に、文部科学省の下に「人・自然・地球共生プロジェクト」(略称:共生プロジェクト)が立ち上がりました。これは、地球温暖化や異常気象など、人類の生活、産業に重大な影響を及ぼす環境問題について、その現象を科学的に解明し、適切な対応を可能にすることを目的としたものです。そのミッションの一つに地球温暖化予測研究がありました。そこで、東京大学気候システム研究センター、電力中央研究所、海洋研究開発機構地球環境フロンティア研究センター、気象研究所など、産学官にわたる研究機関の英知を結集し、IPCCの第4次報告書に寄与することを目標に予測研究がスタートしたのです。同じ2002年に、当時世界最速、1秒間に40兆回もの計算ができるスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」が運用を開始したこともあり、それを有効に活用した研究を行うことになりました。
その主な成果をご紹介しましょう。
まずひとつめは、世界最高の解像度の気候モデルができたことです。予測研究では、地球の大気・海洋を数百から数十キロ四方のマス目(解像度)に分け、必要な条件を物理の法則に基づいて当てはめ、気温など気候の変化を表現します。予測にはいくつかのモデルがありますが、そのうち、大気の流れと海流の両方を計測する大気・海洋結合モデルにおいて、大気に関し、従来300km四方の解像度だったものが、地球シミュレータで計測することにより100km四方の解像度まで精度を高め、それによって温暖化予測や、温暖化の原因特定などに関する進んだ知見を得ることができたのです。
また、温暖化の影響による極端な気象現象の変化についても大きな成果がありました。台風の構造などもシミュレーションできる20km四方の超高解像度大気モデルを使って、世界の台風やハリケーンなど熱帯低気圧の再現実験を行ったところ、実際に観測されたそれらの発生域・進路でかなりの程度一致。それをもとに温暖化が進んだ100年後の世界をシミュレーションすることで、温暖化により台風やハリケーンの強度が増すということが確認できたのです。
さらに、従来の気候モデルに炭素循環*の考え方を取り入れ、コンピュータ上により現実に近い地球をつくりあげることで、そこから新しい知見を見出しました。従来は、「二酸化炭素が増加すると温暖化が生じる」ということにとどまっていたのですが、二酸化炭素が増えるとそれに対応して植物や有機物の反応が変わり、さらに加速度的に温暖化が進むことが分かったのです。
これらの新しい研究結果は、全てIPCCの第4次報告書にも盛り込まれました。地球シミュレータの登場により、第3次報告書時点での予測研究よりもはるかに解像度(詳しさ)や精度があがったことで、日本の研究成果は非常に高く評価されました。IPCCの議長からも、地球シミュレータによる研究成果をもたらした研究者に対して、謝辞をいただきました。