ここでもIT、で、エコ
  1. 知ることから、はじまるエコ。 -地球の“今”をみる-
  1. ヒートアイランド対策にも役立つIT
  2. CTPでCO2を削減

温暖化予測研究の中核を担う日本〜

国際的な連携が進む予測研究

Q:

予測研究はどのような分野で活用されるのでしょうか?

近藤氏:

 環境対策には、原因をなくしていく緩和策(CO2排出削減など)と、対症療法としての適応(策)があります。適応とは、例えば、海面が上昇している地域から移住するなど、現実に進行している温暖化についてどう対応するかといったことを考えるためのもので、政策決定の判断材料にもなります。今や世界のいたるところで温暖化の影響がすでに出始めており、将来への懸念が強くなっています。地球シミュレータの予測結果は、そうした適応研究にも活かされています。適応と緩和は今や同時並行して進めていかなければならない状況にあると思います。

 その例として、世界銀行がプロジェクトとして行っているカリブ海域の沿岸地域や、南米コロンビアなどの高山生態系の適応研究への協力依頼があります。適応のための研究には、地域的に詳細な計算結果が必要になるため、地球シミュレータの超高解像の研究結果を利用させて欲しいということになったのです。またアンデス山脈などは、屏風のような特異な地形になっているので、従来の300kmの解像度でも地球規模の大気の大きな流れを再現するには充分なのですが、そこに地形の影響などを交えて再現するには不十分で、詳しく気候の変化を再現することができません。それが、地球シミュレータの解像度になると、複雑な地形でも精密なシミュレーションが可能になります。実際に日本の気象研究所のグループが、これらの研究が軌道に乗るまでの協力を行いました。この報告書は、つい先頃、世界銀行から発表されたばかりで、その表紙を地球シミュレータの写真が飾っています。

 また、JICA(国際協力機構)と共同での国際協力も進めています。例えば、アルゼンチンのアンデスよりの地方では、ワインの原材料となるブドウを栽培しており、そこではアンデス山脈の雪解け水を利用した灌漑設備に依存しています。もし、アンデスの降雪量が減ると、その産業や人々の生活に大きな打撃となります。そのようなことから、適応研究が進められています。我々は世界銀行のプロジェクトと同様、データを提供するとともに、アルゼンチンの技術者に地球シミュレータを活用した協力を実施しています。

Q:

今後の研究とテクノロジーに対する期待は?

近藤氏:

 2007年4月から新たに文部科学省のプロジェクトとして立ち上がった「革新プログラム」では、予測だけに止まらず自然災害に気候変動がどのような影響を与えるかも研究することになっています。共生プロジェクトでIPCCに貢献した研究グループが中心になって、モデルのさらなる高度化研究をどんどん進めています。
 従来は100年単位で研究が行われていましたが、100年後だけですと政策決定のより現実的な判断材料になりません。そこで、25年先の「近未来」もターゲットにすることも重要と考えています。四半世紀の間に起こる豪雨や熱波など極端現象を予測することで、防災対策などを適応研究に役立てたいと思っています。
 一方、植物や微生物、生態系の影響などによる「炭素循環」などを取り入れた「地球システムモデル」を高度化し、300年くらいの長期にわたる予測研究も行っていきます。

 また地球シミュレータは、地球科学分野の研究においては、現在も最速レベルのコンピュータとして注目を集めており、イギリス、フランス、シンガポールなど、世界11カ国の研究機関と提携し、グローバルな共同研究や協力を行っています。

 今後も予測研究・適応研究のモデルの高度化を進めていくために、日進月歩で進歩していくコンピュータ技術を積極的に活用できる環境を整えていきたいと考えています。