
「だいち」が、具体的に環境に貢献している例は?
一番分かりやすい例は、アマゾン熱帯雨林地域の森林観測だと思います。「だいち」に搭載されているセンサーのうち合成開口レーダー「PALSAR」は、Lバンドという波長(約23cm)の電波を発信し、その反射を受けて地上のデータを作成します。このように波長が長いと森林伐採後の地表は滑らかに見えレーダーの信号は全反射し暗く映ります。一方、森林はでこぼこに見えますので,レーダー信号は後方反射して明るく映ります。この画像を時系列で比較することにより、森林伐採等の変化を知ることができます。又、信号の一部が木々を透過して地面まで到達する為に、地表面近くの状況(例えば、森林の下まで押し寄せる洪水の状況)も知ることができます。
他にも電波を使った衛星はありますが、それらは短い波長の電波を使っているため、木々の上(樹冠部)で跳ね返されてしまいます。そのため正確に地表の情報をとらえることができず、森林の状態を把握しにくい面があるのです。
ちなみに電波は光と違って、地上が雲に覆われていても雲を透過して地上の様子を確認できるので、天候の影響をうけません。アマゾンがあるブラジルには12月から2月くらいまで続く雨期がありますが、「だいち」なら、雲の多い雨期でも森林の状況を把握することができるので、ブラジルからの協力要請を受け、観測したデータを提供しています。データは、ブラジルで深刻化している森林の違法伐採の監視に貢献します。(詳細記事はこちら)
また違法伐採監視以外にもアマゾンの森林観測をする大きな意義があります。アマゾンは、非常に水の豊富なところで、雨期と乾期を繰り返し、水域がダイナミックに年変化します。この2つの時期を観測し、川に沿ってそれらの差分解析を行えば、広がった川幅の面積を知ることができます。雨期に沈んだ樹木は、腐敗・醗酵した後、二酸化炭素以上に地球温暖化に悪影響を与えるとされているメタンガスを発生します。したがって、乾期に樹木の量を観測しておけば、沈んだ面積から最終的に発生するメタンガス量の推計に役立てることができると考えています。
今後、「だいち」に期待されていることは?
「だいち」は、アマゾン以外にも世界各地の森林観測でその活用が期待されています。木が切られ、廃棄されるまでのライフサイクルで試算すると、1トンの木が伐採されることで、約3トンのCO2が排出されることになります。そのため、森林の観測は重要な活動のひとつなのです。また京都議定書で2013年までに各国のCO2排出削減目標が策定されていますが、2013年以降の枠組みでは各国の森林伐採量の割り当てが決められます。それが守られているかという監視にも役立つと思います。
さらに、「だいち」を使って、森林バイオマス(生物資源)量*がどれくらいあるかを調べようとしています。JAXAが主導する、世界21研究所との共同プロジェクト「京都・炭素観測計画」においても、森林のバイオマス量の計測が重要なテーマのひとつです。森林のバイオマス量の変化を見続けることで、CO2排出量の変化も知ることができるかもしれません。
また、レーダー画像の明るさとバイオマス量の関係性を明確にしたいと思っています。例えば、明るいとバイオマスが多く、暗いと少ないといったものです。これは研究者にとっての夢であり、ぜひ実現したいと考えています。
世界の衛星の中でも、現在Lバンドの合成開口レーダーを搭載しているのはこの「だいち」だけあり、森林観測の分野では非常に注目が高まっています。今後もさまざまな研究に役立てていきたいと思います。