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企業戦略におけるCSRの重要性

2003年11月19日
株式会社 日本総合研究所
上席主任研究員 足達 英一郎氏
CSR (Corporate Social Responsibility)とは
 最近、CSR (=企業の社会的責任)の観点から新たな企業像が求められるようになっています。それは、従来の革新的な製品、サービスを提供し、納税を通じて利益を社会に還元する責任に加えて、顧客、従業員、環境問題などへの一層の配慮を企業に求めるものです。今年に入って、多くの企業が環境報告書をサステイナビリティ報告書に改編したり、CSR担当部署を設置したりと対応を進めています。

 ただ、こうしたCSRの要請に違和感があるとする声もあります。「欧米の価値観の一方的な押し付けではないか」、「国内の内発的な市場の構造変化の帰結なのか」、「CSRは企業業績に本当に結びつくのか」などの声はその代表です。
企業戦略としてのCSRの必然
 それでも、CSRは多くの日本企業にとって、重要な企業戦略になると考えられます。その理由は、日本社会の人口減少が避けられないという事実からです。百年後には、日本は現在のタイ国と同じ規模の人口、台湾を3つあわせた規模の人口の国となります。この過程で、国力を維持しようとすれば、当然、これまで以上に海外との関係を強化せざるを得ません。具体的には、資本のグローバリゼーション、製品市場のグローバリゼーション、生産拠点・人材のグローバリゼーション、資材・製品調達のグローバリゼーションの4つの側面 もはや国内市場の論理だけでは通用しない でいかに競争力や顧客満足を獲得するかということが焦点になります。

 失われた10年といわれた期間でさえ、こうした海外との関係は確実に強まっています。CSRの要請が仮に海外からの外圧だとしても、もはや日本企業は国内市場の論理だけでは通用しないという認識を持つ必要があります。翻って、CSRの要請で求められる企業像には、「顧客に誠実」、「人材を育成・支援」、「環境保全を重視」、「社会活動に積極関与」など、日本企業が伝統的に重視してきた要素も数多く含まれているといえるのです。そうした側面を再評価し、アピールしていくことがCSRの要請下でのグローバルな競争力にもなると考えられます。  
CSR経営推進のための3つのヒント
 CSRの要請に当惑している企業があるとするなら、私は、次の3つのコメントを申し上げたいと思います。第1は「欧米の企業が格段に道徳的だということではない」ということです。欧州にも米国にも企業の抵抗感は確実にあります。しかし、戦略としてこれを選択しているのです。第2は「要請に網羅的に応えなければならないのではない」ということです。日本企業は生真面目すぎる感がありますが、一点豪華主義でも構わない。むしろ特色ある取組が、個性となり、メッセージとなるということがあります。第3は「『陰徳』という言葉にとらわれる時代ではない」ということです。取組の発信はもとより、異なる価値基準には反論も必要であり、「敢えて批判に晒されることが、企業を鍛えることになる」という腹決めも必要でしょう。グローバリゼーションのなかでの企業行動には、相当の自己変革が必要になります。
CSRは真のグローバル企業への試金石の一つ
 明治の文豪、夏目漱石はかつて、西洋に反発して孤立するのでもなく、単に西洋の尻馬に乗って空騒ぎするのでもなく、日本の理由を説明することが生涯の事業だと論じました。CSRは、これまで以上に海外との関係を強化せざるを得ない日本と日本企業にとって、真のグローバル化への試金石としての重要性を持っているのです。
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